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タバブックス代表 宮川 真紀さん インタビュー「働く」ことの 多様な価値観を探る

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シンプルなようで難しい「働いて生きること」。仕事にまつわる様々なトピックを拾いあげるリトルマガジン「仕事文脈」編集長の宮川真紀さんに、雑誌に込めた想いを聞いた。

暮らしの土台である「生きかたや働きかた」を取りあげるメディアをつくる

 
―「仕事文脈」発行のきっかけとなったお話をお聞かせください。
 仕事文脈は、2012年の11月に第1号を発行しました。その頃、生きかたや働きかたをテーマにしたメディアで読みたいものがあまりなかったので、幅広い視点で「仕事」を取りあげようと思ったのが始まりです。また、2010年から「OL財布事情の近年史」というWEB連載をしていたことも大きいですね。OLの人たちの家計簿記事を1980年~2010年の30年分みて、どういうふうにお金を使ってきたかを検証する企画です。連載を通して、たった30年の間に「女性の仕事や生きかたが大きく変わっている」ということを実感したんです。また、「消費は女性がリードしてる」と言われていますよね。けれども、調べてみると女の人は働いている短期間しか自由になるお金を持っていないことが多い。そういった現実も色々見えてきて、生きかたや働きかたの悩み、問題の根源の深さを感じたんです。

―連載の最終章は不況が本格化した2000年代ですね。
 2000年代は、ライフスタイル雑誌が台頭した時期でもあり、「素敵な暮らし」がフィーチャーされていました。一方、現実には不況で女性はお金がないということも実感していて。生活の土台となるお金や働きかたについて、どうしているかをオシャレな雑誌では言わない。そこで、暮らしの背景にある具体的な仕事に関するメディアをつくろうと。みんなが開けたがらない部分をテーマにしようと思ったんです。

正解を拡張すると多様な働きかたが見えてくる

 
―現在(2015年1月)仕事文脈が5号目に突入しましたよね。発刊当時から考えかたに変化や影響などはありましたか?

 仕事文脈の取材では、いろいろな働きかたの人に取材をしていて、起業なり、新しいことを始めている人に多く出会います。そういう人達に話を聞くと、一つの目標を持って、これを目指して……というよりも、何かのきっかけで流れに乗って、その場に応じて柔軟に対応していくうちに今の仕事やスタイルに繋がったという人が意外と多いんです。今って1個ダメになると、もう全部ダメだって思ってしまったり、周りからもそう言われがちですよね。でも、一般的に正しいと言われるやりかたから外れても、いくらでも新しいことができるんだなと取材を通じて感じることは多いです。

―仕事文脈では臨機応変に働くさまざまな人々を紹介しているんですね。

 従来の働きかたにとらわれず、自分なりの仕事や生活をしている人をクローズアップして、実際にどう働いているかを載せていこうと考えています。他の人の仕事をみるのは面白いし、そこから見えてくるものは絶対あるだろうと。生きかたや働きかたについて提唱する人は世の中に数多くいます。ただ、スタイルやモデルケースを目指しすぎるのも逆に不自由になることもあるかもしれないと思うので。この雑誌では提言とか評論ではなく、実際に「何かやっている人」をシンプルに紹介したいと思っています。

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分かりやすさに流されず物事の根本に目を向けてほしい

 
―「仕事」という見えにくいテーマを、幅広くとらえながら新しい視点で知ることができるのは仕事文脈という雑誌の魅力だと思います。
 意識的にそのようにしている部分はあるかもしれません。例えば、ドキュメンタリー番組で女性の貧困などについて、ことさら悲惨な取りあげかたをすることがありますよね。もちろん、事実や問題としてあるのは分かりますが、貧困というイメージをメディアが過剰に表現することに対して、疑問を持ってしまいます。少し見方を変えれば違う生きかたもあるはずなのに。物事を単純にとらえて二項対立をつくってしまうと、わかりやすいものしか選べなくなってしまうんじゃないのか? という危惧はありますね。

―さまざまな角度からの視点や基準を持つことが多様化への一歩なのでしょうか。
 常識にとらわれすぎないで、もうちょっと根源的なことを見たり知ったり感じたりしないと、枠にはまっていってしまうんじゃないでしょうか。インターネットでも限られた時間の中、一部の言葉や発言だけが切り取られて炎上する。これは、もうある種のエンターテインメントですよね。仕事文脈という雑誌は特に制限もないので、それぞれの仕事の背景や、そこに至るまでの説明を省略せずに、きちんと拾っていければいいなと思っています。これからも、幅広くいろいろな職種や働きかたの人を取りあげたいですし、仕事や働くことについて、持続的に興味を持って考えていければいいなと思いますね。

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女と金 OL財布事情の近年史
女性誌30年分の家計簿記事から見えてきた「OLの財布事情」とは? 若い女性の仕事とお金の関係を徹底的に研究した一冊。
(1,620円/アストラ/2013年)

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仕事文脈
気になる働きかた、ないようである仕事、なんとかなる生きかたなど、仕事のあれこれを取りあげる小さい雑誌。年2回春と秋発行。(514円~756円/タバブックス/2012年11月創刊)

Text _Megumi Murayama(Japan Life Design Systems
Photo _ Tomoki Hirokawa

(Life Design Journal vol.5 2015年4月15日号掲載記事より転載)

宮川 真紀 Maki Miyakawa

タバブックス代表 | 「仕事文脈」編集発行人

東京生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。
株式会社パルコにて雑誌編集(月刊アクロス)、書籍編集(PARCO出版)を経て、2006年よりフリー。書籍企画・編集・制作、執筆(神谷巻尾名義)などの活動ののち、2012年より出版社タバブックスを設立。冊子『仕事文脈』編集発行人。
http://tababooks.com

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