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株式会社クラシコム 代表取締役 青木 耕平さん インタビュー「プロの生活者目線で 発信する情報 ―支持されるECコンテンツの作り方」

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北欧発の雑貨や食器、その他様々な国の暮らしを支える道具たちを扱うECサイト「北欧、暮らしの道具店」。生活者に直接的に商品をPRするのではなく、有益な情報を提供しながら間接的に商品に興味を持たせるコンテンツは、月間1000万PVを誇る。その理由について代表取締役・青木耕平さんに聞いた。

サービスの裏側に嘘がない環境を設定すること

 
 
―「北欧、暮らしの道具店」をはじめたきっかけは何ですか。

 実の妹であり、株式会社クラシコムの取締役である佐藤友子がスウェーデンを訪れ、北欧での生き方にインスパイアを受けたことですね。いち旅行者の目線で見たときに「こういう風に生きていきたい」と思えるライフスタイルが、北欧では実現していたんです。そこで妹に促されるまま、初めて北欧を訪れました。ライフスタイルはもちろんですが、一番興味を持ったのは、グローバル企業のビルが19時には消灯し、真っ暗になっている状況でした。一人あたりが稼いでいるGDPが日本よりも高いにもかかわらず、働いている時間が短いという現実に驚き、同時にビジネスマンとして悔しさも感じました。元々違うビジネスを妹と行っていたのですが、そういった北欧への興味の高まりから、現在の事業をスタートすることにしたんです。北欧については訪れるまであまり興味を持っていませんでした。起業したのが2007年ですが、世間的には2006年に『かもめ食堂』というフィンランドを舞台にした映画が公開されたり、北欧発の大型家具店である「IKEA」が船橋にオープンしたりと、北欧への関心が高まってきており、タイミングとしてはいい時期だったかと思います。

―18時に全員退社する制度も、注目を集める要因になっていますね。

 創業当時から、残業らしい残業はしていませんね。「北欧のライフスタイルっていいよね」という話を発信しているにもかかわらず、自分たちが残業して疲弊していたり、汚い環境で働いていたりしては、読者に嘘をついていることになってしまうんじゃないかと思うんです。だから、サービスの表側と裏側にできるだけ矛盾はないようにしたいなと。最終的にはお客様にそういった見えない部分が伝わってしまうと思うんです。また、女性向けの媒体をやるからには、媒体を動かしていく側も女性が中心になることが予測できました。そんな女性が生きていく上で、ごく自然に迎える結婚や出産というライフステージにおいて、何の不安もなく仕事を続けることができる職場環境を作りたかったんです。入社する時点から、将来の節目での悩みがない状態にすれば、一人ひとりのよりよいパフォーマンスを引き出せると思ったんです。

プロの生活者目線が力を持つ時代

―実際に使ってみたい商品を提供する等、社員制度が充実していますね。

 商品を紹介する際に、「実際のところどうなの?」という部分が、読者が一番知りたい箇所だと思うんです。しかし、そのコンテンツを続ける上での難点は、試すために商品を社員が買い続けなければならないこと。そこで、弊社では社員に「ウイッシュリスト」という、欲しい商品のリストを作らせています。その中から実際にピックアップして、その商品を欲しいと思っている社員に福利厚生の一環として支給して使用させ、その使い心地を記事としてアップしてもらっているんです。自分が欲しいと思った商品を使ってレポートを書くわけですから、社員も自然とストレスなく、「こんないいものがあるよ」という素直な気持ちで商品を紹介できるんです。そんな風に、嘘偽りのない環境で記事を書かせることが、素人の書いた記事に力を持たせる要因だとも思います。

―記事や写真すべて、社員の方が担っているんですよね。

 はい、弊社ではプロのクリエーターは特に雇っていません。昔は作り手であるクリエーターや、選び手であるバイヤーが力を持っていました。しかし現代では読者モデルのような、身近な存在でありながらセンスのある、プロの生活者の力が伸びていると思うんです。買い物の参考にするのは、身近なおしゃれな友達のおすすめだったりしますよね。お客様にとって相談しやすくて、ちょっといいよねと思われるような、ほどよい距離感にいるプロの生活者を目指していきたいです。

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コミュニティを大切に扱い楽しめる空間を提供する

―コンテンツを発信するときに気をつけていることはありますか。

 記事を書く際、〝自分が読みたいと思えるコンテンツにすること〟は徹底させるようにしています。自分が書きたいものを自由に書いたり、世間の流行から勝手に想像して作り上げた、架空の読者に向けたようなコンテンツを書いたりすることは奨めていません。自分が読みたいと思えるならば、最低一人は読者がいるわけですから。また、せっかく集まってくれた読者の方々を分裂させるような内容は発信しないようにしています。様々なライフステージ、経済状況にいる中で、ある価値観の中でつながって「北欧、暮らしの道具店」に集まり楽しんでくださっている読者を、大切に扱うことが大事だと思っています。

―今後の取り組みや方向性について伺ってもいいでしょうか。

 新しい取り組みとしては、7月からスタートした「BRAND NOTE(ブランドノート)」という記事広告ですね。企業から依頼を受けて、編集チームが商品、サービスなどを「面白くて役に立つ」内容に編集し、「読みもの」のかたちで発信するものです。弊社HPの閲覧者は年々数倍にも膨れているにもかかわらず、売上が同じように数倍成長しているわけではないんです。せっかくの閲覧者数を売上に反映させつつ、今後も変わらぬスタンスで、読者に満足していただけるコンテンツを発信していきたいです。

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仕切りのない、広々としたワンフロアのオフィス。撮影できるスペースもあり、スタッフ自らコンテンツに使用する写真を撮る姿が見られた。

Text _Saori Otsuka(Japan Life Design Systems
Photo _ Tomoki Hirokawa

青木 耕平 Kohei Aoki

株式会社クラシコム 代表取締役

1972年生まれ。株式会社クラシコム代表取締役。06年、実妹と株式会社クラシコムを共同創業。単独、共同創業は通算で同社で3社目。翌年、賃貸不動産のためのインターネットオークションサイトをリリースするが、1年ほどで撤退。07年秋より北欧雑貨専門のECサイト「北欧、暮らしの道具店」を開業し現在 に至る。

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