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隈研吾氏著書『建築家、走る』

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2020年東京五輪・パラリンピックの新国立競技場に、大成建設・梓設計・建築家の隈研吾氏で構成するチームが提案したA案が決定しました。隈氏には2005年第19回文化経済研究会でもご講演をいただき、その建築に対するお考えをお話いただきました。昨秋出版された隈氏著の『建築家、走る』にはその建築人生や哲学、さらには悩みやちょっとした愚痴など、隈氏の人となりまでが垣間見られる一冊です。

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■建築家という競争社会

昨今は都市にも個性が求められるようになって久しく、そこでブランド力のある建築家にランドマークとなるべく建築物のデザインを頼むということが一般的になっています。
建築家のもとにはコンペへの参加以来のメールが舞い込み、彼らはコンペに勝つべく世界中を行脚します。

「ぼくらはその戦いに参加して、選ばれないと仕事が始まらないことになり、いまでは1年中そういうレースに借り出されるようになりました。いってみれば、毎週レースに出なければいけない競走馬みたいなものです」

建築家としてはじっくりとまだ見ぬ建築に対する構想を練ることが理想ながら、実際はコンペに引っ張り出される中でその時間もとれず、事務所をつぶさないためには休みもなしに走り続けなければいけないのだとか。

■竹の家、裏話

隈氏の代表的な建築の一つが万里の長城のすぐ横にある『竹の家』。
一回チームで中国に遠征すれば使い切ってしまう程度の設計量しか貰えず、それが逆にクライアントのことも考えず自分のやりたい建築を思いっきりできた要因になりました。本来であればすぐに腐ってしまう竹という材料を使ってしまい、提案は「破れかぶれ」だったそうです。ところがそれがクライアントに予想外に受け、実現。竹の家を気に入った映画監督のチャン・イーモウが2008年の北京オリンピックのCMの冒頭に登場させたことで隈氏の名前が中国にとどろき、その後にも大きく影響することに。

■建築家の宿命
文庫版の後書きに、隈氏は以下のような述懐を寄せています。
「(文庫になったということは、建築家の生活に一般の人が関心を持っているというよりも「反建築ブーム」と呼ぶべき動機にある)『反建築ブーム』とは何だろうか。わかりやすい例が「新国立競技場問題」である」「建築というのが、あまりにもヴィジュアルであり、見えすぎてしまうから、炎上するのである」どういった過程で、どういった力が働いて決定がなされたのかすらよく分からない問題が、「「建築」という形をとったとたんに丸見えになる。丸裸になる」

全てが電子化されてあらゆるものが形を持たなくなってくる現代において、建築だけは相変わらず丸裸のままで聳え立つことを宿命付けられています。自分が作ったものがそこにあり続ける限り、建築家は常に評価あるいは批判される立場にあるのですね。それは自らの分身が社会を物理的に形作っているという建築家という人々の宿命なのかもしれません。

株式会社ジャパンライフデザインシステムズ
チーフエディター
小林 征夢

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