建築はトップダウンからボトムアップへ 中村拓志氏の哲学
印刷する9月度講師、中村拓志氏の建築事務所にお伺いしてきました。面白いお話も聴けたので、代表作である東急プラザ表参道原宿に合わせて少しご紹介します。
屋上はすり鉢上の構造で、どこか包まれるような優しさがあります。木の上にある鳥の巣のような、素朴で落ち着く雰囲気があるとなんとなく感じていたのですが、中村氏のご出身は石川県金沢市。そこで自然と触れて遊び、少年時代に作った秘密基地やツリーハウスに感じたワクワク感が建築家としての原点だと聴いて納得がいきました。
そう思ってみればこの屋上、完全にツリーハウスに見えてきます。植物も多く配置され、そこから外に覗く原宿の街は、木に登って周囲を見下ろしているかのように新鮮な世界に見えます。
バブル期のトップダウン建築に共通するのは、頑強でどこか融通がきかず、世界中の何処にあっても同じような印象しか受けないのではないか、という良くない意味での普遍性。かたや、中村氏の建築は身体性やその地域に根差していること、つまり生活者側からのボトムアップの建築をモットーとされています。その建築に似合うのは、「ランドマーク」という一昔前のハコモノ経済的な要素が混じっている言葉ではなく、「秘密基地」のような少年時代の懐かしさと冒険をそそる思い出。都会人がビル群の中で忘れかけていた、プリミティブな感覚を思い出させてくれるような気がします。
現代の建築は、人間の身体と空間の関わりをいかに考え、何を投げかけるのでしょうか。日本の建築界を背負って立たれる中村拓志氏のお話には多くの示唆に富んでいることと思います。
2016年9月15日(木)
第85回 定期セミナー「文化社会の戦略」
ゲストスピーカーに建築家NAP建築設計事務所 代表 中村 拓志氏、東京画廊 代表取締役社長 山本 豊津 氏をお招きして開催致します。
■開催日時:2016年9月15日(木)14:00~17:00(受付は13:30より)
■会場:アイビーホール青学会館 3階「ナルド」
(東京都渋谷区渋谷4丁目4番25号)
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