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ジャレド・ダイヤモンド著『銃・病原菌・鉄』

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文化経済研究会でご登壇いただく東京画廊代表の山本豊津氏はアートだけではなく異分野の本も積極的に読むことを楽しみになさっています。
特に、科学や数学などの方面に最近はまっているようで、講演の打ち合わせの際も「一度本気で数学を勉強してみたい」と仰っていたほど。

そんな山本氏にお薦めの本を尋ねると、アメリカの進化学者ジャレド・ダイヤモンド著の『銃・病原菌・鉄』をここ最近読んだ本のヒットとして挙げてくれました。
97年に英語で発表され、世界中の言語に翻訳されて2000年には日本語版も出版されました。2012年には文庫化もされ未だに版を重ねている世界的ベスト&ロングセラーです。

1972年、著者がパプアニューギニアでフィールワークをしている際、
「あなたがた白人はたくさんのものを発達させてニューギニアに持ち込んだが、私たちニューギニア人は自分たちのものといえるほどのものがほとんどない。それは何故だろうか?」
と現地の政治家から尋ねられ、人類の進化、言語、歴史を研究する中で得た自分なりの答えを25年ごしに書籍として発表したのがこの本です。

この疑問は、ひいては何故世界の富は現在のように不均衡な形で配分され、国々の間には格差が横たわっているのだろうかという素朴な形に言い換えることができます。

ヨーロッパ諸国が1500年ごろにこぞって世界各地の征服に乗り出し、その頃の支配・被支配の構図が未だに格差となって現れていました。この時点で金属製の道具を使い、産業革命の萌芽すら見られる地域もあれば、石器時代と変わらない暮らしをしている地域もありました。
この時間を更に遡り、その原因を探ればそれは紀元前1万1000年ごろ、世界の各大陸に分散していた人類が異なる発展を遂げ、農業が起こり家畜の飼育や治金技術を編み出した民族がいた一方で、相変わらずの狩猟生活を続けていた民族も存在したということが言えます。

トマ・ピケティが『21世紀の資本』で明らかにした現在社会の富の不均衡は、遡れば紀元前1万年以上前に人間が分散した頃、大陸間で異なる発展を遂げたからということに帰着します。
では更に問いを推し進め、大陸間で何故そこまで異なる進化が起こったのか。本書はそれを明らかにしようという試みです。

「数世紀も前に征服されたり奴隷化された人々の子孫が、社会の最下層で暮らすのを我々は今でも日常的に目にしている(中略)大半の人々は、人類社会の歴史で見られる大きなパターンについて、詳細かつ説得力があり、納得できる説明を手にするまでは、相変わらず生物学的際に根拠を求める人種差別的な説明を信じ続けるかもしれない。私が本書を執筆する最大の理由はここにある」

南北問題を考えるにあたって、貧困に面している人々に先天的かつ遺伝子的な要因を見出してしまう。そういった差別的な言説がまだまかり通っている現状への告発書とも言えるのでしょうか。

本書を読むうちに、自分自身が今ここに居るという社会の立ち位置が、実はほとんどが環境的な要因に決定されていたのでは?という疑惑が膨らんでいくことに気付きました。
プロテスタントの人々は努力することが神への奉仕であると信じ、産業革命を後押ししたという側面がありますが、「努力」という最も後天的で自発的に見える要因すら、実は環境によって決定されていたに過ぎないのではないか。
歴史書、自然科学書であると同時に、自分自身を問い直すきっかけにもなり、様々な読み方ができる本書。お薦めの一冊です。

株式会社ジャパンライフデザインシステムズ
チーフエディター
小林 征夢

次回、文化経済研究会のお知らせ
bunkei1609

2016年9月15日(木)
第85回 定期セミナー「文化社会の戦略」
ゲストスピーカーに建築家NAP建築設計事務所 代表 中村 拓志氏、東京画廊 代表取締役社長 山本 豊津 氏をお招きして開催致します。
■開催日時:2016年9月15日(木)14:00~17:00(受付は13:30より)
■会場:アイビーホール青学会館 3階「ナルド」
(東京都渋谷区渋谷4丁目4番25号)

セミナーの詳細はこちら

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