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出口治明氏著『「全世界史」講義』

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文化経済研究会でご登壇いただいたライフネット生命代表 出口治明氏のご著書『「全世界史」講義』(新潮社)をご紹介します。

一切営業をしない代わりに保険料を格安にするという斬新すぎる経営で保険業界に風穴を空けたライフネット生命ですが、代表の出口氏は激務の傍らで膨大な書物を読みこなす読書家・教養人としての顔も知られています。

自ら「歴史オタク」と称する出口氏が世界史をまとめた本書はたちまち5万部のベストセラーなのだとか。

話はそれますが、歴史には2種類の考え方があり、多くの歴史は「ヒストリー」という考え方が主流です。
「history」という単語を分解すればそこに「story」、物語という単語が含まれていることが分かります。
「hi」は束ねるという意味を持つ語幹で、多くの物語をバンドルしたものが「History」であると言えるでしょう。
日本語の「歴史」は「History」を翻訳する際に明治時代に考案された造語なので、意味的には「History」ということ画と同じ意味を指しており、英語圏の人々が「ヒストリー」という言葉で指す概念と同じものを意図しています。

もう一つ、歴史という単語を持つ言語であるドイツ語では「Geschichte」(ゲシヒテ)という言葉で「History」と区別される概念を指し示します。
かなり簡略化するならば、「History」が集められた物語の意味であるのに対し、「Geschichte」は純粋に出来事だけを並べたリストであると言えます。
「歴史」が出来事だけを並べたリストだなんて当たり前のようですが、実は「History」的な歴史書と「Geschichte」的な歴史書には決定的な違いがあります。
それは前者が人類の「Story」、すなわり発展史、もっと言えばキリスト教を中心とした西洋文化の発展史であるのに対し、後者はアジアやアフリカ、イスラムなども含めた出来事の記述であるということです。

つまり、我々は「歴史」という言葉を使うとき、知らぬ間にキリスト生誕から、更に言えばヘブライ人の出エジプトから始まる西洋文明という巨大な「Story」を前提し、我々日本人もその「Story」に参加しているということを認めています。

そういう意味では、西洋史は当然扱いながらも、あくまでそれらには東洋やイスラム史と同等の扱いにとどめている『「全世界史』講義』は純粋に「Geschichte」的な歴史記述であり、ある意味では西洋中心主義への対抗とも読むことができます。

話は戻って、文化経済研究会の講演にて出口氏は以下のように仰いました。

「よく『日本はGDP3位の国なのでもう成長はしなくてもいい。心が豊かであればいい』と言いますが、日本の国際競争力は年々落ちています。すると世界3位の経済は維持できない。私たちが今いる場所はとても清潔に保たれていますが、これも適わなくなります。インフラのレベルは格段に落ちることになる。すると、やはり競争力は付けなくてはいけません」

「ものから心へ」よく聞くテーゼですが、ある意味ではこれも成長経済と西洋資本主義の延長で出てきた考え方と言えます。
出口氏が見るのは「事実」であり、西洋中心主義的物語への日本人的な反国精神が著書においても、経営においても、生き方においても現れているように思えます。

株式会社ジャパンライフデザインシステムズ
チーフエディター
小林 征夢

次回、文化経済研究会のお知らせ

bunkei1607

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