20170203

株式会社AsMama 代表取締役社長・CEO甲田 恵子さんインタビュー

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子育て世代を支援するコミュニティサイト「AsMama」。さまざまな子育て支援サービスを提供し、会員数4万人を突破するほど、今、大きな注目を集めている。女性の社会進出が叫ばれる一方、少子高齢化、待機児童問題など抱える課題も多い。そんな時代に一石を投じ、「ワンコイン 子育てシェア」という、新しい子育て支援サービスを確立した「A s M a m a 」代表の甲田恵子さん。ソーシャルニーズマッチングという視点で、現代に生きる女性たちを支える彼女の想い、そして見据える未来の形とは?

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誰もが育児も仕事も、やりたいことを叶えられるインフラをつくりたい

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AsMamaが主催するイベント告知などはインターネットやチラシなどを使って行われている。

ーこれまでIT企業、ベンチャー投資会社でキャリアを積み、広報、IRのプロフェッショナルとして活躍してきた甲田さんが起業をしようと思ったきっかけは何だったのですか?
20代から30代前半までは私自身キャリア志向が強くて、会社の中で自分のポジションをどう上げていくかということにしか興味がなかったんです。普通、結婚して出産をしたりすると仕事をセーブする人のほうが多いですよね。でも、私は逆で子どもが産まれるからこそ、早くキャリアを積んで、時間管理や経済的な自由を得られるようになりたいという思いが強くあったので、出産後さらに仕事のアクセルを踏んだんです。

ー育児と仕事の両立は相当大変だったと思います。
そうですね。実際は仕事と育児の両立っていうよりも、板ばさみに近い状態で……。そんな中2009年の1月、突然会社都合で「9割の社員を解雇します」という通達が出されたんです。本当に青天の霹靂で。こんなに一生懸命働いてきたのに、まさか私が会社を辞めなきゃならないなんて、と。その瞬間、これからは大きな会社に勤めているから守ってもらえるという時代じゃないと思ったんです。

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数々の事業家を輩出してきた『社会起業塾』の修了証。ここでの経験がひとつの転機に。

ーこの出来事が「AsMama」の立ち上げにつながっているのですか?
会社を辞めたあと、職業訓練校に行ったことも大きかったかもしれません。そこには、出産や介護のために仕事を辞めざるを得なかった人たちがたくさんいたのですが、彼女たちと話していると「もし、身近に育児や介護を手助けしてくれる人がいたら、この人たちは仕事を辞めなくても済んだのではないか?」と感じることが度々あったんです。その一方、私よりも先に出産や育児のために仕事を辞めた友人たちに会うと、育児そのものは楽しいけれど、なぜか社会から取り残されている孤独感や罪悪感にかられることがあると話す人もいて……。その時にふと「身近に助けてくれる人さえいれば仕事が続けられる人と、時間や経験があるから誰かの役に立ちたいと望んでいる人」この両者をくっつけることはできないかと思いついたんです。

「意外と根性ないんですね」の言葉に奮起。子育て世代のリアルな声を力に

ー甲田さんが目指すソーシャルニーズマッチングとはここが原点なのですね。

初めは社会にあるさまざまなニーズのマッチングをしようと思っていたんですが、日本の少子高齢化について知れば知るほど、女性が子どもを産めて、しっかり働ける社会が必要だと思ったんです。そのためにはまず、子育てを頼り、支えられるインフラをつくらなくてはと。でも実際、創業当時は、〝地域で子育てを頼り合える社会をつくりたい?という想いとビジネスがなかなかリンクせず苦労したんです。

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親子交流イベントの様子。親子で楽しめ、役立つ情報や体験ができるイベントを全国各地で開催。イベントを通じて、友だちの輪を広げたり、ママサポーターと知り合いになる場にもなっている。

ーそんな状況からどうやって、現在の子育て支援サービスを確立したのですか?
どうしていいのかわからず悩んでいた時に、たまたまNPO法人が主催する『社会起業塾』に選抜されたんです。ここでは「誰の何をいつまでにどれくらい変えると社会は変わるのか」ということをひたすら自問自答するのですが、その時に、メンターの方に、想定している利用者層は具体的に「どこの誰で、どこに住んでいて、何歳でどんなことに困っているのか」ということを何度も答えさせられたんです。私自身ターゲット層は漠然とイメージしていても「どこの誰?」と聞かれると「どこの誰だろう……」とわからなくなってしまって。そしたら、「じゃあ、実際にそういう人がいるのか、街に出て探しましょう!1000人に聞いてみましょう」と。でもいきなり街に出て「地域で子育てを助け合える社会をつくろうとしているAsMamaの甲田です」と声を掛けても最初は誰も振り向いてくれないんです。初日は2枚しかアンケートが集まらず、2日目、3日目はゼロ。さすがに1000人なんか無理ですとメンターの方に弱音を吐いたら、「甲田さん意外と根性ないんですね」と言われてしまって。それがすごく悔しくて、だったらやるだけやってみようと。最初は嫌々やっていたんですが、300、400人を超えたあたりから、残業でいつも保育園のお迎えに遅れてくるワーキングペアレント、預け先がなくて病院に子どもを連れてくるしかないシングルマザーなど、一人で頑張る子育て世帯の本音を聞けるようになってきたんです。助けてもらいたいのに、大きな声で「私を助けて」と言えない人たちが世の中にはたくさんいる。だからこそ、電気、水道、ガスのように、当たり前に誰かを頼れる子育てのインフラが必要なんだと、強く実感したんです。

将来的には、中高齢者向けの支援サービスも展開していきたい

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30代前半まではバリバリのキャリア志向。当時は、自分がソーシャルな事業を始めるとは夢にも思っていなかったと語る甲田さん。

ー子育て世帯のリアルな声を聞けたのはとても大きな収穫でしたね。
1000人の声を聞いていると、子どもを預けたい、送迎をお願いしたい、逆に子どもを預かることで収入が欲しいというニーズのほか、暮らしにまつわる情報をSNSや口コミなどから拾っていることもわかったんです。そこで、ママ世代にダイレクトに情報をアプローチしたい企業に協賛をしてもらって、イベントを開催したらどうかと思ったんです。子育てを支援してほしい人、支援したい人、そして情報を発信したい企業。この三者の出会いの場となれば、一石三鳥になるなと。これが「地域交流事業」という一つのビジネスモデルとなりました。
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全国から有志を募り、ミッションビジネスとして創業したAsMamaの信念や想いが表れている。

ー子育てシェアの根幹となる部分が確立した瞬間ですね。では、「AsMama」が目指す今後のヴィジョンを教えてください。
もともと子育てを頼り合える社会をつくりたいという想いで事業を始めているので、今はこの「子育てシェア」をとにかく早くいろんな地域に広めたい。それから、やはり日本は長寿の国なので、高齢者がどんどん増えていきますよね。生きている最後の最後まで「自分が生きていてよかった」「誰かの役に立った」と思いながら過ごせるってすごく大事なことだと思うんです。だから次は、生活支援をし合いながら、気にかけてくれる人が身近にいる、そんな中高齢者向けの生活支援サービスをやらなければと思っています。そういった意味では、「子育て」というところから、多分野へ展開していく時期が来たなと感じています。

Close Upワンコイン子育てシェアとは?
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お迎えに間に合わない、少しリフレッシュしたいというときに、友だちや知り合いに託児や送迎をお願いできるサービス。1時間500円~700円の謝金設定があり、当事者間でやりとりする。また、万が一、事故などが起こった時のために保険が適用されているので、預けるほうも預かるほうも安心。近所に知り合いが少ない場合でも、親子交流イベントに参加してママサポーター※や地域のママたちと知り合う機会があるのも魅力。

※ママサポーターとは?
AsMamaが提供する託児研修(無償)を受講したのち、送迎、託児を積極的に支援してくれる地域子育てのお世話役。AsMama主催のイベントを通じて、地域の輪を広げながら、子育て支援の担い手になっている。

甲田 恵子 (こうだ けいこ)

株式会社AsMama 代表取締役社長・CEO

フロリダアトランティック大学留学を経て、関西外国語大学英米語学科を卒業。2000年に大手ISPニフティ株式会社の海外事業立ち上げメンバーに参画。新規事業立案、ビジネスアライアンス、海外広報に従事。07年ngi group株式会社へ転職し広報・IR部長に就任。09年3月に同社退社。09年11月に株式会社AsMamaを設立し代表取締役社長に就任。著書に『子育ては頼っていいんです~共育て共育ち白書』(神奈川新聞社)、『ワンコインの子育てシェアが社会を変える』(合同出版)。

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