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人生100年のライフデザイン

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長寿を価値づける社会、それは自己の感性を磨く社会の到来を意味している―。
高齢化、単身者世帯の急増、そして孤独死……
多くの課題に直面する日本にとって「人生100年時代」をどのように捉えていくべきなのだろうか。
大人文化の情報発信ウェブマガジン「club willbe」を展開する
残間里江子氏との対談から人生100年のライフデザインを紐解く。

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大人の学び舎「club willbe」の立ち上げ

谷口 残間さんとは、かれこれ30年来の付き合いになります。大人文化の情報発信ウェブマガジン「club willbe」は、どういう経緯で立ち上げられたのでしょうか。

残間 私が50歳を迎える直前にある企画会議で「F3層(※広告業や商品開発などの際に用いられる年齢別区分の名称。F3層は、50歳以上の女性のことを指す)は何歳までですか?」とチームリーダーに尋ねたところ、「ずっと」と言われ、ショックを覚えたのです。50歳以上は一括り。消費ターゲットからも外されていました。「50歳を超えると、物を買わない、ライフステージも変わらない世代」と一蹴されました。「そんなことはない」と言っても誰にもわかってもらえなかったことが、ずっと引っかかっていました。
 そして、私たち団塊の世代が大量退職する2007年がやって来ました。シニアに狙いを定めた多くの企業が商品開発に投資していきます。糸井重里さんが、1988年に書いた「ほしいものが、ほしいわ。」という名コピーがありますが、あの頃と同じで、我々団塊の世代が期待していた新商品は全くなくて、洋服一つとってみても従来通りの、侘び寂び色の古臭いデザインばかりで落胆したのを覚えています。

谷口 シニア世代を一括りで捉えてしまう象徴的なエピソードですね。

残間 3年もすると、商社をはじめとして企業がシニア・プロジェクトから撤退してしまいました。「団塊の世代は口ばかりで動かない」という分析でした。確かに、団塊の世代は、自分たち自身がオリジナルで創り上げたものはなく、ほとんどのものがアメリカから入ってきたものです。ファッションだけでなく、音楽も旅も、それまでにないものを体験しました。とはいえ、人数が多かったので、次々に新しい物財の洗礼を受けました。そういう人たちが60歳を迎え、あらためて自分たちのライフスタイルを創造していきたいと思っていたのに、登場したものは、既存の高齢者をイメージしたものばかり。そのような情勢に甘んじることなく、自ら「これはイヤ」とか「こういうものがほしい」と言っていこうと思って、2009年に「club willbe」を立ち上げました。

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谷口 会員登録も実名を使うなど、当時としても、とても先進的な取り組みでした。今のSNS時代の到来を予見していたかのようです。まさしく楽しい時間を作り出すことを欲した大人が集まり、パーティやイベントなど様々な楽しみのあるクラブ活動という形で展開されています。

残間 今年、会社を立ち上げて37年目、「club willbe」を始めてからは9年が経過し、来年10年目という節目を迎えるところです。

柔軟な発想を受け入れる
経営に「継続と変化」を

谷口 「継続は力なり」ですから。時代の流れに対して素直に受信を繰り返し、感性を磨き続けていると、変化に対して敏感に反応できるようになり、判断にも磨きが掛かっていきます。
 さすが経営者として37年目を迎え、なおも変化を求め続ける残間さんは、鋭い直感力と継続力が備わっていますね。人生100年時代の今、常に変化していくことの
重要性を示唆されています。

残間 企業も人と同じで、延命装置で何とか生きながらえているという現実から抜け出していく時代だと思います。私自身は目下、自分の「NEXT」を探しているところです。

谷口 効率性を重視しがちな男性的な発想だけではなく、これからの経営には女性の感性やしなやかさが必要な時代です。そこで、これまでに本誌でも秋山弘子さんや上野千鶴子さんなど女性のオピニオンリーダーの方々にお話をうかがってきました。

残間 男性の経営者からは「いつまで中学校の生徒会長のようなことをやっているのだ」とお叱りを受けたりします。今時、高校の生徒会長でももう少しお金もうけが上手だと。
 そんな中、最近、谷口さんの言葉で、胸に刺さったキーワードがあります。それは「継続と変化」です。継続するためには変化が必要だということで、これまで年間50回程度開催していた「club willbe」の事務局主導イベントを少しずつ減らして会員自らが主催する企画を増やしていこうと考えています。
 ただ、常に会員の皆さんに日々の変化を伝えるため、設立当初から毎日更新しているブログだけは続けていこうと思っています。

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谷口 9年間、休まずにブログを日々更新してこられたというのは感服します。最近は、若い人たちも社会の抱える課題に対して、果敢に解決の糸口を示しています。

残間 昔から、若い女性に対しては率先して応援したくなるのですが、実は息子がシニカルな性格というのもあって、若い男性が苦手でした。そんな中、若手の社会学者である古市憲寿さんと出会っていろいろ話していたら、面白い発想を持っているなと感心して、若い男性を見直しました。

谷口 老若で区分けせず、互いの価値観を融合させていくことで、新しい発想も生まれます。ノンエイジの時代の今こそ、取り入れていきたい考え方ですね。

残間今年は、「club willbe」の新しいテーマに「クロスジェネレーション」を掲げ、シニアだけが集まってクラブ活動をしているというイメージから、もう一歩先に行きたいと考えています。
 今後は、リアルとバーチャル、アナログとデジタルの両面を知っている最後の世代として、老と若の橋渡し役になりたいと思っています。やはり素敵なことをしている人は、年齢に関係なく、魅力的で惹きつけられるものです。

生涯現役を貫いた母
「好き」を続ける生き方

谷口 最近は、お母さまの介護をされていたそうですね。

残間 一昨年の暮れに99歳で亡くなってしまいましたが、約15年間介護生活をし、最後の4年間は大変でした。本人は120歳まで生きるつもりで、いつも世界最高齢の人の名前をそらんじていました。
 昔から文章を書くことや本を読むことが好きだった母は、70代後半から青山にあるシナリオ学校に通い出し、80代後半の頃には『週刊朝日』の創刊80周年記念の特別企画に応募して最終選考の7編に選ばれたりもしました。

谷口 「リタイア」という概念を持たない博識なお母さまでしたね。

残間 遺品を整理していた時に、ダンボール箱350個分にもなる母の書いた原稿が出てきました。母の誇りを守るため、私が見て、まあまあと思った原稿だけを残して、他はすべて廃棄しましたが、結局、シュレッダーを3台も壊してしまいました。
 母が他界し、やれるだけのことはやったと思っていましたから自分では平気だと思っていましたが、しばらくは体調を崩してしまいました。ようやく元気になりましたので、あらためて「リ・スタート」と思い、37年続けてきた会社経営を38歳の男性を社長にし、私は別会社に移りました。

谷口 変化を厭わないことが重要です。お母さまも変化を受け入れ、生涯現役を続けてこられました。
 本誌もそうですが、書籍を含め、私たちがつながっておきたい方々に継続してお送りしています。そして、私たちの中の〝変化〞を届けているつもりです。だから、我々が発行している書籍や雑誌は、新しい気づきを芽吹かせるプレゼンテーションレターの役割を担っているのです。

「感じること」も事実に
情報化社会が意味する多様性

谷口 残間さんの場合、ご自身がプレゼンテーションレターとなって多くの人たちの心に突き刺さっていますよ。

残間 私の仕事は人と物と事を組み合わせて、新しい価値観を創造することだと思っています。人に関していえば、外に見えていない部分、その人が自分でも気づいていない能力や才能を発掘したいと考えています。
 谷口さん同様、毎日たくさんの人にお会いしますが、周囲から苦手だといわれている人ほど興味が湧きます。逆にみんなから好感を持たれている人はあまり面白いとは思わないですね。

谷口 確かに残間さんの周りには、とても個性的な方が大勢いらっしゃいます。それが魅力的な方ばかりだから、すばらしい出会いを続けていらっしゃる証拠と受け取っています。

残間 癖のあるような人のほうが、後で仲良くなれることが多いですね。摩擦係数が高い人のほうが関係性は深く、長続きするようです。

谷口 その着想を持っている残間さんは、すでに多様性という価値観を兼ね備えています。

残間 私、基本的に性善説派なのです。生まれたての子どもは、持って生まれた資質も否定はできませんが、社会的な影響を受けておらず、誰もが純粋無垢だと信じることにしています。だから、どんな悪行を働いた人でも、愛する人のために涙した瞬間があったかもしれないし、シワシワになってしまった人の手を見ても、この手も誰かにとっては愛しい手なのだろうなと思い巡らせてしまいます。

谷口 鋭い観察力ですね。まさにシナリオライターの才。人の裏側に潜むドラマを構想する力は、高い感性を持っていらっしゃる証拠です。

残間 何かに行き詰まると、駅やホテルのロビーなど、知らない人が集まる場所が好きで、よく行きます。街中を歩く人の姿を眺めていると、辛いことがあっても、私などは恵まれていると思えてきますから、こんなことでへこたれてはいられないと、元気になれます。

谷口 高い感性は情報化社会の今、不可欠な素養ですよ。リアルとフェイクの垣根すら取り払われていく社会だからこそ、たとえ事実と符合していなくても感じることが何よりも重要になってきています。
 私も残間さんから、同じ時代を生きてきた多くの仲間をご紹介いただきました。そして、時代の仕掛け人として、どの企業とどの企業とをつないでいけばいいのか、直感的に判断されてこられました。この判断力は、残間さんだからこそできる能力だと思います。

〝長寿〞を楽しむための
「擬似家族」という着想

谷口 残間さんは、「club willbe」を組織して多くの人たちと交流を続けてこられました。収益も顧みないで、人とのつながりこそ、優先すべきこととして、実直に続けてこられてきました。
 一方、多くの日本人は戦後72年の間で、お金を稼ぐ方法は覚えてきました。しかし、人とのつながりこそ重要であるのに、それを軽視してきました。そのため、退職を機に第2の人生を歩み出す姿も、どこか途方に暮れているようにすら感じます。
 還暦を過ぎ、子どもたちも自立した今、家族という強い結びつきとは違う、ゆるいつながりで結ばれた仲間同士で時間を過ごす人が増えています。この「擬似家族」という潮流が新たに現れてきました。

残間 住まい方も変わってくると思います。今、倉本聰さんが脚本を手がけていらっしゃる『やすらぎの郷』というテレビドラマが評判になっています。日本のテレビ界に貢献した人たち専用の住まいで、悲喜交々の出来事を描いているのですが、これはミラノ郊外にヴェルディが私財を投じて建てた「音楽家のための憩いの家」と同じような老人ホームです。いってみれば、同じ嗜好を持った大人たちが集まる感性共同体です。
 このようなホームをプロデュースできたらいいなと思っています。

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谷口 共通した価値観を持った者同士が集まり、感性的な関係でつながるとは、まさに「擬似家族」を具現化したクラブファミリーですね。

残間 人には必ず最期が来ます。通常の老人ホームは禁止事項が多すぎます。でも、楽しみの中で暮らすとすれば、バーラウンジのような社交場も欠かせません。そこで、いろんなお年寄りが語りあう。「club willbe」のメンバーからも、そういう施設を作ってほしいと言われます。

谷口 人生は楽しいから生きるに値します。最期、楽しかったかどうかが、人生の価値を決定づけます。

残間 誰もが〝長寿を楽しめるような社会〞になるために、あと一踏ん張りしたいと思っています。

谷口 長く生きることを価値づける社会、それは、お互いに「ありがとう」と言い合える謙虚さが求められます。その謙虚さが個人を磨く「学習」となって、楽しみの共感連鎖が起こっていきます。つまり、生涯現役で学び続けていくことが求められています。ありがとうございました。

<2017年9月25日発行の『Life Design Journal vol.11』より>

未来へとつながる「新しい大人文化の創造」へ

「いつまでも社会とのつながりを持ち続ける生き方を」を掲げ、2009年に大人世代向けの会員制コミュニティ「club willbe」を設立。会員1万3000名が集う大人文化の情報発信拠点として、「willbeアカデミー」や「willbeプレイガイド」など大人の「学び」をサポート。さらに、大人同士が気軽に集える場所として「willbeサロン」を開催するなど、大人文化を発信し続けるためのプログラムを幅広く展開している。また、若い世代と大人世代をつなぐブリッジ役としても機能。年齢や性別を問わないコミュニティの形成から、次なる価値の創出を目指している。

「合唱」を楽しむすべての人のために


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「willbe混声合唱団」は、2013年3月から活動を開始した音楽プロジェクト。ボイストレーニングに重点を置いた指導は、合唱のみならず、本来の自分の声を取り戻す喜びにも。2018年4月には東京・サントリーホールにて「第3回willbe混声合唱団コンサート」の開催を控える。

老若男女問わず楽しめる新スポーツ


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浮き球をボールに三つのベースを使った7人制の三角ベースボール「浮き球△ベースボール」。「club willbe」では運動経験が少ない方でも十分楽しめるスポーツとしてチーム「南青山ぼちぼち団」を組織。2016年の首都圏リーグでは、20チーム中13位という成績を残している。

「club willbe 」へのお問い合わせは、こちらへ

残間里江子 (ざんまりえこ) 

株式会社キャンディッドプロデュース
代表取締役社長 プロデューサー

1950年仙台市生まれ。アナウンサー、雑誌記者、編集者を経て、1980年 株式会社キャンディッド・コミュニケーションズを設立。雑誌『Free』(平凡社刊)編集長、山口百恵著『蒼い時』の出版プロデュースをはじめ、映像、文化イベントなどを多数企画・開催する。1986年、各界で活躍する女性105人のパネリストによる「地球は私の仕事場です」、1991年には各界有識者134人のパネルリストによる「21世紀への伝言」、2001年には、栗原はるみさんから小泉総理(当時)まで、各界で活躍する119人のパネリストによる10日間連続大型トークセッション「大人から幸せになろう」をいずれも自主企画事業として実施。2007年には、「ユニバーサル技能五輪国際大会」総合プロデューサーを務める。2009年には、既存の「シニア」のイメージを払拭した新しい「日本の大人像」の創造を目指し、会員制ネットワーク「club willbe」(現、実名登録会員数は1万3000人を超える。http://www.club-willbe.jp)を設立。国土交通省「社会資本整備審議会」、財務省「財政制度等審議会」など行政諸機関の委員を数多く歴任。近著は『閉じる幸せ』(岩波新書刊)。

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