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株式会社リディラバ 代表 安部 敏樹

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高校の落ちこぼれが、同級生の助けによって東大に入学するー。
そんな漫画のようなストーリーを地でいく安部敏樹さん。
同級生が自分に寄せてくれた“関心”を糧に這い上がった、
安部さんが今対峙するのは、
社会への無関心という目に見えぬ問題だった。

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興味を持って学ぶ人ほど
チャンスが広がる
未来がくる

人類が進化を遂げた理由は
“問題を見つける力”があったから

ーリディラバでは社会問題を知るための事業を多く展開していますが、そもそも安部さんが〝社会〞という部分に着目した理由を教えてください。
 学生時代の経験だったり理由はいろいろあるんですが、そもそもの理屈からお話をすると、ネアンデルタール人とホモ・サピエンスを比べた時に、その昔なぜホモ・サピエンスが勝ち残ったのか考えたことはありますか? 脳の大きさでいうとネアンデルタール人が1600㏄位で、ホモ・サピエンスである現生人類は1400~1500㏄位。恐らくネアンデルタール人の方がホモ・サピエンスよりもスペックは高かったわけです。にもかかわらず、なぜホモ・サピエンスが勝ったのか? いろんな可能性がありますが、僕は「社会を作る力の差」だと考えているんです。他の動物と比べてホモ・サピエンスが面白いのは「これが問題だ!」という問題を見つける力があって、その問題を社会化する力があることです。そして、その問題を個々のリソースを使って解決しようとする。これができるということが人類の面白いところであり、進化を続けた理由でもあると。

ー人類の進化の上で、社会問題を解決する力というのは切り離せない要素であるということでしょうか?
 基本的に人類というのは、社会と共にあるわけです。でも実際は、これを理解している人は少ない。ちなみに、リディラバでは「社会への無関心を打破する」ということを掲げているのですが、〝関心〞ってどういうことだと思いますか?

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ー興味を持ったり、気づきを得たりといったことでしょうか。
〝関心〞というのは定義が非常にシンプルで言い換えるなら「時間」です。「今度飲みに行こうよ」って言いながら実際に行かない人って多いじゃないですか。それは飲みに行きたい気持ちはあるけれども、優先順位的には劣る、つまり関心がないということなんです。例えば、民主主義では、ある課題に対してみんなで問題意識を持って、物事を決めなければいけないという前提があります。でも、いきなり年金問題、防衛問題どうします? って聞かれても正直、多くの人は「ん? ……」ってなると思うんです。「正直、議論とかって絶対無理」みたいな。民主主義の前提では、みんなで問題意識を持って、課題に対して判断(投票)できるだけの情報を持つということになっているけれども、実際のところその前提って明らかに嘘っぱちですよね。とはいえ、当事者意識や問題意識を持つ人が増えなければ、そもそもの民主主義は成り立たない。成り立たないんだけれども、誰も自分ごととして考えることをやろうとはしていないし、無理だと諦めてしまっている人が多い。でもそれは違うよねと、皆さんの時間をどれだけ社会課題に関する事柄に使ってもらえるか、そのための機会と場を提供することが僕たちの事業であり、やりたいことなんです。

興味があるところに
様々な学びがある

ー最近では「大人のための学びの学校」というテーマのもと、新たなメディアを立ち上げるプロジェクトに挑戦していますね。
 これは僕が今やりたいことの一つで、やっぱり大人から社会に対するかかわり方を変えていかなければいけないんです。リディラバでも中学、高校に修学旅行を提供する事業がありますが、学校に通っている子どもたちは、半ば強制的に修学旅行に行かなきゃいけない。でも無関心だった子どもたちも参加すると変わるんです。社会問題を実際に見て、触れることで勉強をし直す子どもたちもたくさんいて、嬉しい変化もあるんですが、その一方で、子どもたちからすると「じゃあ大人はどうなんだ」と思うわけです。「あんなに偉そうなことを言っているのに、大人は社会に対してきちんと関心を持っているのか?」と。それを言われたら、僕はぐうの音も出ない。実際、中高生や大学生と話していると、よっぽど彼らの方が社会のことを考えている。だから、大人が社会を学べるメディアを作らなければと思い、このプロジェクトを始めました。

メインコンテンツの「スタディツアー」。写真は信濃町移住ツアーで地元の方と積極的に話す参加者たち。

メインコンテンツの「スタディツアー」。写真は信濃町移住ツアーで地元の方と積極的に話す参加者たち。

ーリディラバが提供するメディアの強みとは?
 実は世界中で我々しかできないことってけっこうあって、その一つが僕たちだけが持っている社会に対する認識や見解をもとにした分析です。社会問題っていうのはすごく複雑な構造によって成り立っているわけです。そういうものを調査して、独自の記事を提供できるのは社会問題だけをやってきた我々みたいな集団しかノウハウがない。昔は、社会問題が起こるとそこには大体、悪人がいたんです。賄賂を配る権力者や環境汚染を考えずに自己利益だけを追求する人……。でも社会構造が複雑化した今、そんな悪人はいない。それよりも現代の社会問題の原因は、システムとシステムの落窪にできた何か、という話が多い。だからこそ、これからは、権力の糾弾をやるのではなく、社会問題を可視化する役割が必要で、それが次の新しいジャーナリズムの役割であると思っています。そしてもう一つの強みは、スタディツアーという社会問題を体験するコンテンツを持っていること。正直なところ、メディアで記事を読むだけでは人生は変わらない。だから、興味を持った後にスタディツアーに参加して現場に行く、寄付ができる、そして仕事に変えていくといったステップやアクションを用意できるということも、我々ならではの強みだと思っています。

ー安部さんが考えるこれからの未来に必要な学びとは?
 現代の僕たちって、大昔みたいに毎日狩りをしなくても生きていけるじゃないですか。いつ飢えで死ぬかわからないということもない。それにこれからは、技術的なことはAIにアウトソーシングしていく可能性も高い。となると人間は暇になる。で、暇になると何をするかというと、社会を語ったり、自分の趣味や学びを追求することが増えるんです。そしてゆくゆくはそれが仕事になることもある。僕は今、地元でソフトボールチームの監督をやっているんです。ある意味趣味みたいなものですが、携わったことで地域コミュニティのリアルを知ることができて、ゆくゆくはリディラバの仕事に帰ってくると思っています。そう考えると、学びと仕事って本当に連携している。興味があるところに学びがあって、それが仕事に戻ってくる。だけど、最初から仕事のための学びと考えてしまってはだめなんです。
 また、今後は企業がもっと社会問題にかかわっていくことも必要です。それがきっかけで、社員一人ひとりの意識改革につながることもあるでしょう。

ホームレス体験ツアーの様子。参加者全員でディスカッションを行いながら、解決の糸口を探る。

ホームレス体験ツアーの様子。参加者全員でディスカッションを行いながら、解決の糸口を探る。

ー純粋に学びたいことや興味を持つことを突き詰めることが必要になってくるんですね。
 そうです。僕がリディラバを立ち上げる時に思ったことが「人生は長いぞ。だからこの長い人生の中で自分自身が飽きないような仕事を作りたい」と。そういう意味では、この仕事は飽きることがないし、興味を持ち続けられる。この間まで漁業問題をやっていたかと思ったら、今度は沖縄の基地問題、セクシャリティ問題……と常にいろいろなことに挑戦できるし、学ぶことも多い。
 やはり興味を持てるか、持てないかということが、今後は人類における一番の格差になっていくと思うんです。これからは、やる気がある人や興味を持っている人ほど、チャンスが広がっていく社会になる。でも中には、興味や学びたいことがない人もいますよね。そういう人は、できるだけ自分が知らない社会問題に触れたり、自分と違う価値観を持っている、異質な世界や人と交わって、学びたいものを見つけられる力を養っておくことが必要になってくると思います。

社会課題の現場を訪れ、課題や解決策を考える活動を通して、ディスカッション力、プレゼンテーション力などの育成を行う「教育旅行」。写真は修学旅行生の車椅子体験ツアーの様子。

社会課題の現場を訪れ、課題や解決策を考える活動を通して、ディスカッション力、プレゼンテーション力などの育成を行う「教育旅行」。写真は修学旅行生の車椅子体験ツアーの様子。

落ちこぼれから東京大学入学へ 無茶を現実にする原動力とは?

無関心を打破するというミッションを掲げた理由の一つに学生時代の経験を挙げる安部さん。高校時代は落ちこぼれだったというが、一念発起して大学受験を目指すようになったきっかけは、「『ドラゴン桜』プロジェクトだ。安部を東大に合格させよう」と同級生たちが安部さんに勉強を教えてくれたことが始まりだった。最初は遊び半分だったが、みんなが自分に関心を寄せてくれたことで、頑張る気持ちが芽生え成績は飛躍的に伸びる。しかし、最初の東大受験は10点足りずに不合格。別の国立大学に入学するも、「初志貫徹」ではないと思い、再度勉強し、晴れて東京大学に入学したという経歴を持つ。

安部 敏樹(あべ としき)

1987年京都府生まれ。2006年東京大学入学。大学在学中の2009年にリディラバを設立、2012年に法人化。KDDI∞ラボ最優秀賞など、ビジネスコンテスト受賞歴多数。現在は、東京大学で、大学1~2年生向けの「社会起業」をテーマとした講義を持つ。2017年、米誌『フォーブス』が選ぶ“アジアを代表する30歳以下の社会起業家30人”に選出される。

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