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自由大学学長/キュレーター 岡島悦代

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「未来を耕すダブルローカルライフ」「旅学のすすめ」……など
ユニークで興味深い講義を展開する自由大学をご存じだろうか。
経験を積んだ大人が集い、多様な価値観を持つ人たちと
触れ合うことで「自分の人生」を見つけ出す。
そんな“ 学びの場”を提供し続ける自由大学の学長、
岡島悦代さんに、なぜ人は学ぶのか? その本質を伺った。

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学び続けることで
新しい自分の生き方が
見えてくる

興味を持ったものは
何でも学びに

ー岡島さん自身、最初は受講生だったと聞いて驚きました。まずは、岡島さんと自由大学との出会いを教えてください。
 大学卒業後は、ずっと会社勤めをしていたのですが、ちょうど20代の最後に結婚をして会社を辞めた時に、いろいろ考える時間ができたんです。その時に「会社に勤めてキャリアを形成していくことが普通なんだけれども、そうではない働き方ができないかな」と思ったんです。だから30代に入ってしばらくは、知人が起業したベンチャー会社で働いたり、地元でカフェの立ち上げに携わってそこのマネジメントをやったり、いろんなことにチャレンジしました。でも、また東京に戻って本格的に働くとなった時に、会社に就職するということがものすごく嫌だったんです。そうではない方法を選ぶとなると、起業するかフリーランス。前職の経験を考えれば、フリーランスのウェブデザイナーとして仕事を受けることもできたのですが、それも違うなと。「自分にはどんな能力があって、何を社会に還元して生きていけるのかな」ということを突き詰めて考えていた時に見つけたのが、自由大学だったんです。

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ー最初はどんな講義を受けたのですか?
「地域とつながる仕事」という講義があり、面白そうだなと思ったんです。今でこそ〝地域創生〞ってよく聞く言葉ですが、当時は東日本大震災の前だったので、そういうことに関心を持っている人は少なかったんです。ちょうど私は、地方でカフェを立ち上げて、やり方はよくわからないけれど、「地元を元気にしたい!」という熱意だけはある時だったので、これだと思って参加しました。
 実際に受講してみると、同じような感覚を共有できる仲間と出会えたことが新鮮でした。同じ方向性をもって、一緒に議論したり、対話し合える仲間というのは本当に貴重でしたね。そこから自由大学の講義をいくつか受講するようになりました。

講義の様子。講義内容は地域コミュニティのことから趣味やライフスタイルのことまで多岐にわたる。

講義の様子。講義内容は地域コミュニティのことから趣味やライフスタイルのことまで多岐にわたる。

ー印象に残っている講義は?
 私はこれまでデザイナーとして制作に携わっていたので、紙媒体やウェブを通して他人の経験にかかわることが多かったんです。これからは、「その人自身の経験をデザインする」ということができたらいいなと漠然と考えていた時に、たまたま「キュレーション学」という講義がリリースされたんです。これは自由大学の創立者でもある黒崎輝男さんや運営メンバーが講師となって自由大学の講義作りについて学ぶという授業でしたが、実際に受講してみると「こういうプロセスを踏めば講義が作れます」という話は一切ない。全く関係のない銀座の画廊の主人の話とかを聞かせてくれるんです。
 ここでは「自分は何をもって美とするのか、という美意識みたいなものが大切であり、それをもって学びの機会を作らなければ、他人のものをなぞっているだけではその人独自のものは生まれない」という考えのもと授業が展開されていて、私はこの講義で自分を深く掘り下げる貴重な機会をもらったんです。
 そして最後に自分で作った講義案を発表するんですが、これが本当に大変でした。みんな面白い講義は思いつく。でも自由大学には、一つのテーマで全5回の講義というプラットフォームがあるので、その5回の講義に落とし込むことが難しくて、挫折してしまう人が多い。でも、その時私はなんとか一つのテーマで全5回の講義を作ることができたんです。

自ら考え、自ら動く
経験が未来を作っていく

ーそれはどんな講義でしたか?
 その時作ったのが「朝ごはん学」という講義でした。料理研究家のフルタヨウコさんを教授として立て、「朝ごはん」を主軸にして自分のライフスタイルを考えていこうという内容でした。そしたら当時の学長が実際に講義でやってみようと言ってくれて、自由大学の講義として採用されたんです。その時に自分のアイデア100%で人を集めてお金をいただくということにすごくやりがいや面白さを感じて、これがきっかけでキュレーターとして自由大学の運営メンバーに入ることになったんです。

ー自由大学においてキュレーターの役割とは?
 キュレーターは講義を生み育てる役割を担っています。2ヵ月に1回、講義のプレゼンテーション大会を開催しており、発表された中に自由大学の価値観と合うテーマや企画があれば、一緒に講義を作っていきます。
 自由大学ってボトムアップ型の学びなんです。自分たちが興味を持ったものは何でも学びにするというのがコンセプト。あとは、人の中にある資質をいかに引き出せるかという部分も大事にしていますね。これは日本人の特徴なのか〝自分を語る〞ことになると急に口をつぐんでしまう人が意外と多い。会社のことや自社の商品のことはものすごく流暢に説明できるのに、「自分はどういうことが趣味で、どういう風に生きたいのか」という抽象的な話が苦手なんです。それってものすごくもったいない。皆さんすごく優秀なのに、自分の人生を生きていない。きっと、そういうことにうっすらと気づいている人が自由大学に興味を持って来るのかもしれません。

表参道にあるキャンパスは、緑があふれ、交流が生まれるすてきな空間に。

表参道にあるキャンパスは、緑があふれ、交流が生まれるすてきな空間に。

ー講義を卒業された方はどんな変化がありますか?
 そうですね、やはり講義を受けて何かしらの行動につながってほしいという思いがあるので、受講がきっかけで起業したり、お店を開いたりという人が出るとすごく嬉しいです。あとは、会社の中で新規事業を提案して立ち上げたり、地元に戻って新しいことを始める人もいますね。

ー岡島さんが今一番、注目している講義はなんですか?
 今、自由大学では「カルチャー・アントレプレナー」という講義を募集しています。文化的起業家ですね。
 10年、20年、果ては100年続くような会社を作るにはどうしたらいいのかと、例えば、日本は割と海外で流行っているものをパッと真似して商売にすることは得意なんですが、そうではない時間の長さで起業することをそろそろ考えてもいいのではないかと考えてこの講義を作りました。私たちは、〝文化の力〞というものを信じていて、人の心を動かすものって経済的なことよりも、やっぱり文化なんです。音楽やアート、デザイン……これらの文化の力を使っていくことは、今後とても重要な考え方になると思います。短絡的に経済面だけを見るのではなく、その土地、土地に根づいたビジネス、文化的な背景を持つ起業の仕方などを学ぶ場になったらいいなと思っています。

テーマを決めて日頃の学びの成果を発表する「自由大学祭」。卒業生から実行委員を募り、トークショーや音楽、食、学びのブースなど充実した内容で毎年盛り上がりを見せる。

テーマを決めて日頃の学びの成果を発表する「自由大学祭」。卒業生から実行委員を募り、トークショーや音楽、食、学びのブースなど充実した内容で毎年盛り上がりを見せる。

ー自由大学が目指す学びの場とは?
 自由大学には「ランダム・ウィズダム・フリーダム」という学びの三拍子があるんです。一般的な学びの場がアカデミックな体系的なものだとしたら、自由大学はあえてランダムに、興味を持ったものから学べばいい。ウィズダムは経験に基づく知恵ですね。自分で実際に手を動かして体験することで獲得する知恵。そしてフリーダムは、自由大学のテーマでもあるんですが、自分自身が自由でいるためにずっと学び続けること。これらのマインドを持って、常に学び続けることで、きっと新しい自分や生き方が見えてくると思います。

キュレーターが美意識を持って学びを作る

自由大学の講義作りに欠かせないのが、講義を企画するキュレーターの存在だ。どのようにして講義が生まれるのか、岡島さんに聞いてみた。「2ヵ月に1回、『レクチャープランニングコンテスト』というプレゼンテーション大会があります。書類審査を通過したキュレーターの方にプレゼンをしていただき、優勝者を決めます」。とはいえ、優勝しても必ず採用というわけではない。「最終的には、その講義自体が美しいかどうか、という抽象的なところで判断しています。流行や利益ではなく感性に訴えるものがあるかどうかを見極めながら、キュレーターたちの美意識を大切にして講義を作っています」。

岡島 悦代

受講生を経て2012年より自由大学の運営に参加。「意識が広がるきっかけ」を作ることを目指し、30種類以上の講義の企画から立ち上げにかかわる。夏の特別プログラム「クリエイティブキャンプ・イン・ポートランド」では、プログラムのコーディネートを担当。2014年書籍『TRUE PORTLAND The unofficial guide for creative people 創造都市ポートランドガイド』では食を中心とした現地取材と編集・執筆を担当。2015年6月から3代目学長として自由大学及びクリエイティブチームのマネジメントを担当。

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